山荘には、合成接着材も塗料もいっさい使っていない。外壁も内壁も無垢板のまま。最初は建物全体が妙に白ちゃけて見えたものである。しかし時とともに無垢の木は変色して、茶色がかった渋い灰色に落ち着いた。海岸で見る流木の色。本物の「枯れた木」の色である。本来、木材には無理に塗装する必要はない。ニスもペンキも塗らなくていい。降った雨が流れ落ち、室内や壁の内部に湿気がこもらない設計になっていれば、木は簡単に腐るものではない。
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時とともに枯れていくだけである。昔の家はみんなそうだった。だからこそ私たちは、古い神社や仏閣の建物を見て美しいと感じるのではないか。私は箱根の山荘を訪れるたびに「なんと美しい空気だろう」と感動する。室内に入って深く息を吸うと、芳しいヒノキの香りがする。自分もこの山荘と一緒に年齢を重ねていくのだと感じ、なんともいえず温かい気持ちになる。そればかりか、老いゆくわが生命に生気を与えられる、そんな気さえするのだ。住む人と一緒に朽ち果てる家ではなく、住む人とともに美しく老い、味わいを増していく家。六十歳から建てる家は、そういう家であってほしい。